2011/09/28

作・演出 松木史雄より

あの3月11日以降、「『生きる』って何だろう」と考える時が増えました。やっぱり、その答えは見つかりませんが、ただひとつ思うことは、「恨み」「妬み」「憎しみ」といった恥ずべき感情を少しでも少なく、その代わりに「喜び」「楽しみ」「優しさ」といった思い返すだけでも胸の中が熱くなるような感情が少しでも多く自分にもたらされるような態度で現実と向き合って、しかし自らの人生に起きることは全て自分の責任と受け止めて、残りの人生の日々を過ごして行くことが「生きる」という本来の目的に近いのではないかと思っています。

どれだけの時間が僕に残されているのかわかりませんが、「僕は死にましぇん!!」ではありませんが、もし人間が何かの使命を持って生まれているとしたら、その志半ばの内は死を免れることが出来るのではないかと稚拙にも信じていたいと思っています。いや、違いました。その志半ばで倒れた先人の例えを見ても、その言葉、文、笑顔、といったひとつひとつの面影は、その人の死後においても、その志の輪郭を立ち上げる熱を持ち、後に続く人々および残された人々を励まし、支え、突き動かす力となります。であるとすれば、人の意志、魂はある高みに到達することによって、不滅という解放を得るのではないかと思います。

思うに、私達桜月流ひとりひとりの魂を不滅とする為の器は剱にしかありません。

今日一日を価値高く生きて、不慮の死を迎えようとする瞬間にも自らを励まし、その未知なる一歩へ踏み出す為に必要な何かを悟りたいがためにも今日も剱の稽古に向かいます。

剱を持ちて、舞を舞い、物語を語る。あの3月11日という日を目の当たりにして、改めて、それが桜月流の使命と感じています。

「衣川幻想~完全版」は、そんな思いに突き動かされた、やや客観性の足りない夢見がちな我々が語る、この世で一番美しい物語だと思っています。どうぞ御覧になってください。
桜月流/O-Getsu Ryu 松木史雄


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